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営業マネジメントを整える⑥



(以前、noteに書いた記事をこちらに転載します)

営業マネジメントを掘り下げながら、それぞれのマネジメントレベルで営業支援アプリに必要な機能が何かを示していくことで、いろいろ考えるヒントにしたい、というシリーズ記事の最終回になります。

ここでは、実際に僕が中小企業の営業部で、営業支援アプリの導入を検討したときに、営業マネジメントをどのように整えることを考えていたかを、簡単に紹介します。

そして、そこに向けて検討したアプリに、こんな機能が不足していた、というのを示すことで、営業支援アプリの選び方を、具体的にイメージしやすくできないかな、と期待しています。

現状と目指す姿

まず、どんな営業組織だったかというと、ソフトウェア開発会社の営業部だったので、BtoBで主に大手メーカーを相手にしていました。人数規模としては10人弱。週に1回の定例会議があって、それぞれのメンバーは、その会議に向けて週報をWordファイルでまとめて、定例会議で内容を共有する感じでした。その会議で、情報共有と、必要に応じて議論や指導がされますが、時間がないこともあって、情報共有や事実確認のウェイトが大きく、あまり議論はされません。

全社的に、売上向上のために営業能力を向上することが課題だったため、個々の営業案件の状況や、全体としての売上見込を、組織的に把握する仕組みを導入したいということで、営業支援アプリの導入を検討しました。

そこで、営業マネジメントをどのように整えていくかを、3ステップでまとめたのが、以下の図です。

3ステップで営業マネジメントを整えていく

言っていることは、本シリーズ記事でずっと載せている下図と同じです。

例の図

3ステップと合わせて図の上からなぞっていくと…

経営計画に掲げた売上目標を達成するためには、営業マネジメントのPhase1として「目標と実績の管理」が必須。

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ただし、結果の数字を眺めるだけでなく、中身のある管理をするためには「パイプライン管理」の仕組みを整えることが大切。

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そして、これらPhase1を前提として、実際に個別の営業活動を改善していくためには、Phase2として「営業活動管理」が必要。

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最後に、Phase3として、営業マネージャーが個別の営業活動を指導するだけでなく、組織的な学びの仕組みを作っていくために、「データ分析による営業機会の発見とノウハウの確立・共有」をしたい、ということになります。

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営業マネジメントを改善サイクルで考える

ただですね。実は、上に書いたPhase1からPhase3というのは、古いやり方でも意識してきていることなんですよ。Wordファイルと口頭で営業活動を報告させて、可能なら営業部長が顧客訪問にも同席しながら、そこで見えたことに対して改善をかけていく。定例会議で全体共有することで、組織的な学びを生み出していく。

ではなぜ、営業力強化が全社的な課題になっていたのか、と言ったら、端的に言えば、営業部が出すアウトプット、つまり受注の量と質が不足していたからです。そして、それを改善するスピードが遅い、というか、改善しているように周りから見えなかったからです。

ですから、営業活動の改善サイクルの高速化と見える化、というところにフォーカスすることになった、と、僕なりに解釈しています。そして、そこに営業支援アプリの役割もあります。

そうであれば、まずは、営業部として目指す改善サイクルを定義しないといけないと思うので、僕は下図のような全体像にまとめました。

※図の中では「営業支援アプリ」を「SFA」と省略しています。SFAというのはSales Force Automationの略です。


営業マネジメントの全体像

営業支援アプリを使うと、アプリに書き込んだ情報は、閲覧権限を持ったメンバー全員がすぐに参照できます。そうであれば、営業部長などのマネージャーは、わざわざ定例会議を待たなくても、リアルタイムに営業担当者の状況を把握して、適宜、指導ができるはずです。

図の中で改善間隔をぐるっと円になった矢印で表していますが、個別の営業活動は「1day」の改善サイクルですぐに改善できますよね、と言っています。

そのためには、マネージャーが営業支援アプリを使って個別の営業活動の状況を把握します。当たり前ですが。意外とここでつまづくケースが多いと思います。システムを導入したのに、マネージャーが使ってくれない。それでは、意味がないです。

だから図の中で「マネジメントの起点にSFA(営業支援アプリ)がある」「マネージャーがここを押さえる」なんてことを、敢えて書いています。逆にそこさえ押さえれば、営業支援アプリの導入は、ほぼほぼ成功すると思います。マネージャーが見ているなら、営業担当者も必要な情報を入れざるを得ないので。

それじゃあ、週1回の定例会議はやめよう!というのも、アリだと思いますが、このときは、せっかく営業部メンバーが集まる機会なので、活かす方向で改善サイクルを設計しました。Phase3を目指すためには、個々の活動やデータから得られる知見を、全体に共有する仕組みが必要です。そのための議論と共有の場として、定例会議を使って、だから、ここの改善間隔は「1week」と書いています。

こうして、営業活動の改善サイクルの高速化と見える化を、営業支援アプリを基盤として実現しましょう、ということになりました。

検討した営業支援アプリに足りなかった機能

その会社は、中小企業の中では大きい会社でしたが、それでも中小企業です。ということは、お金がない。というか、お金をかけるための意思決定能力が弱いです。

何が言いたいかというと、とにかく安いアプリから検討しようとします。その結果として、検討するアプリに必要な機能が足りない、ということが頻発するわけです。できるけど上手くできない、とか。

ここでは、当時、検討したあるアプリAに、どのような機能が不足していたか、ということを紹介することで、アプリを検討するときのリアル感をちょっとでも体験してもらいたいと思います。

「目標と実績の管理」に必要な機能

  • さまざまな切り口で
  • 目標値が設定できて
  • 実績値が集計できる
  • 関係する誰もが任意のタイミングで確認できる
  • 売上でなく受注を管理できる(両方できるなら、なおよい)

ここの機能は、満たしていると言えばいるかな、という感じではありましたが、集計機能が弱くて、「さまざまな切り口」で目標値を設定することができませんでした。具体的には、データとして目標値を持っていなくて、グラフをつくるときに、手作業で目標値を添えるようなつくりでした。そのため、営業担当者ごとの受注目標額とか、顧客別・顧客セグメント別の受注目標額とか案件数とかを設定して、実績値と比較することができません。

目標値と実績値を比較するために、わざわざExcel表などに必要な値をコピペして、そこでグラフ化するというのでは、せっかくアプリを使っている甲斐がないですね。

「パイプライン管理」に必要な機能

  • 目標管理の切り口に従って
  • 定義した段階ごとに案件を集計できて
  • そこから個別案件の詳細情報にアクセスできる
  • 各段階に案件が留まっている時間を集計できる
  • 可能ならば…
    • 段階ごとに必ずすべきことを定義して
    • 案件ごとに実施の有無を確認できる


そもそもパイプライン管理を必須機能としてアプリを探していたので、基本的な部分は当然できます。ただ、アプリAが時系列を意識した作りになっていなかったので

  • 案件がどこからどこに移行したのか
  • どの段階に、どれくらいの期間、滞留していたか

ということがアプリ上では計算・確認できませんでした。これは、この先のPhase2やPhase3のためには致命的です。

「営業活動管理」に必要な機能

  • 担当メンバーの活動予定と実績を確認できる
    • カレンダーで重点顧客への活動がマークされて、すぐに見分けがつく
    • 一定期間接触できていない顧客を顧客群ごとにリストアップできる
  • 案件ごとの個別の活動詳細を記録して、あとでその情報にアクセスできる
  • 社内SNSとの連携が簡単にできる

アプリAでは、ここは明確に弱かったです。特に予定を管理する機能が弱くて、カレンダー表示などもできず、予定したタスクを条件に合わせて抽出するのも、あまり条件が選べませんでした。

活動記録をつけることは、もちろんできますが、その情報を活用することがしづらいです。例えば、顧客セグメントごとに、どのような営業活動をしているか並べてチェックしたくても、検索して一覧表示することができませんでした。特定セグメントごとに直近3ヶ月に活動して「いない」会社を集計・列挙するということもできません。

営業活動管理をしようと思ったとき、これは結構つらいです。人間が目と手を使って、営業担当者の活動を分析していかなければいけないとなると、最初はマネージャーがやる気でも、すぐにマネジメントがされなくなることが想像できます。

「営業機会の発見とノウハウの確立・共有」に必要な機能

  • 任意の入力項目を追加できる
    • カテゴリーなどは簡単に入力できるように選択式にできる
  • 任意の軸でデータを集計/分類/表示できる
    • 複数の条件に合致した案件数を集計できる
    • 自社の顧客分類に従って任意の期間の営業活動記録を列挙できる
  • 案件が時系列上でどのように推移したか記録して分析できる
  • ルールとして決められたタスクの実施状況を確認できる
    もしくは、タスクを実施しないと次の段階に進めない

この辺りの機能は弱すぎでした。レポート機能としては、記録された情報を一覧として出力するだけでした。しかも前述のように、情報を絞り込む仕組みが弱いので、任意の軸で集計/分類/表示したいと思ったら、あとで手作業で絞り込んで整形する作業が必要になります。

顧客を分類するセグメント名、例えば、たこ焼き屋とお好み焼き屋を分類したいと思ったときに、顧客を登録するたびに手入力で「お好み焼き屋」と入力していたら、「お好み焼き」「お好み焼」「お好み焼き屋」など、打ち間違いやブレが生じる可能性があります。なので、登録したセグメント名を選択できるようになっていないと、データとして活用しづらいです。

そして、時系列でのデータ分析もできません。アプリの機能としては、営業機会やノウハウを発見することは、全然支援してくれないです。

また、段階ごとに必ず実施すべきタスクというのを設定して、案件ごとに実施したかをチェックするための機能もありませんでした。なので、見つけたノウハウを組織に組み込もうと思ったならば、運用ルールとして、案件ごとの活動記録の中に、例えば「見積り提示済み」みたいなことを書くようにして、それをあとでチェックする必要が出てきます。外部ツールを使って集計することも検討が必要です。

少しずつ前に進む

このように、アプリAには必要な機能が不足していました。他のアプリならば、必要な機能を十分に満たしているものもあります。しかし、この会社では、機能が不足しているアプリAを採用したのでした。

それは、まずPhase1を実現したいという思いが強くあり、そこまでなら機能不足のアプリAでも何とかなることと、目先のコストを抑えたいということがありました。叩き上げの営業マネージャーからすると、これまでアプリなしでもイメージしてきたマネジメントの内容なので、今後すべてのマネジメントを営業支援アプリを絡めてやらなくてもいい、という意識もあったのではないかと推察します(それが正しいかどうかは置いておいて)。

このように、営業支援アプリを選ぶ際には、いろいろなことを考えつつ、アプリの機能を見ていきます。そのときの選ぶ基準というのは、どのように営業マネジメントを整えていきたいか、ということです。まずは営業マネジメントの将来ビジョンをハッキリと構築しましょう。

自組織の営業マネジメントがどうあるべきか、そして、そのために営業支援アプリにどんな機能を期待するか、ということを考えるうえで、本シリーズ記事の内容が、お役に立てれば幸いです。

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