(以前、noteに書いた記事をこちらに転載します)
営業マネジメントを掘り下げながら、それぞれのマネジメントレベルで営業支援アプリに必要な機能が何かを示していくことで、いろいろ考えるヒントにしたい、というシリーズ記事の第2回です。
前回、「営業マネジメントを整える」というのは、営業活動によってホントに「to be(ありたい姿/あるべき姿)」に近づいているか、確かめられて、もっと近づけるように工夫できる状態にする、ということだと書きました。
営業マネジメントを整える①
さて、どのようなアプリ、システムを導入するにしても、まずはそれで「何をしたいのか」という目的が大事です。これまで導入していなかった営業支援アプリを、いま導入したいと考える事業者には、何かしら営業活動を変えていきたい、という想いがあると思います。...
そしてそれは、
「to be」→「経営計画」→「営業活動」→「結果」
というつながりを、上手くコントロールすることでもある、という話を、以下の図を出しつつ、しました。
今回も出てくる難しい図 |
なので、この図をひとつずつ説明していきたいと思います。
まずは「to be」→「経営計画」のつながり
図の一番上には「経営計画、売上目標」と書いています。営業活動をしていくにあたって、これを明確にしましょう、というのは、当たり前のことだと思いますよね。基本的に、このシリーズ記事で書くことというのは、全部、当たり前のことを当たり前にやる、という話でしかないです。ただ、それが意外と難しいので、改めて確認することは大切かなと思います。
この経営計画は、「to be」→「経営計画」というつながりの最初の部分ですから、「to be」に行き着くための計画です。この「to be」の反対は「as is」で、現状のまま進むとこうなる、というものです。
つまり逆から考えると、「to be」というのは、現状のままではない、と言えます。
経営の話をするときに、よく出てくる図、再び |
現状維持を目指している組織においては、この「to be」と「as is」のギャップが小さくなります。そのような組織では、営業支援アプリを基盤としながら営業マネジメントをしていく必要が、あまりないです。基本はボトムアップの営業活動で、既存顧客との関係を深めていく感じで良いのではないかと思います。なので、このシリーズ記事も、あまり役に立たないかもしれません。
トップダウンは、なぜ必要か
現状維持ではなく、「as is」とは大きなギャップのある「to be」を目指す組織では、現場の部分最適を乗り越えて、現状の延長線上にはない要素を、現場に導入して定着させる必要が出てきます。そのときに必要になるのがトップダウンです。
そして「うちの組織は、このようにして『to be』にたどり着くぞ」ということを計画したものが、経営計画です。つまり、この経営計画というものは、「今のお客さんを積み上げたら、今年もこれくらいの売上が狙えそうだから、今期はそこから10%アップを目指すぞ!あとは現場の努力次第だ!」みたいなものとは、少し違うということになります。
例えば、何らかの製品をつくる技術を持った会社が、これまで大手メーカーとの取引で10億円の売上を上げていたとします。ここから売上を増やしたいときに、経営計画が「あとは現場の努力次第だ!」というだけではないとしたら、どんなことが考えられるでしょうか。
もし同じ技術分野でベンチャーが新しい製品を作って出していくトレンドがあったなら、ベンチャーをターゲットに加えるのが良いかもしれません。他にも、メーカーの先にいるユーザー企業に対して、自ら開発する支援をしていく方向性もあるかもしれません。組織内外の情報から仮説を立てて、それにもとづいた営業戦略を策定して、「ベンチャーにアプローチしよう」とか「ユーザー企業と一緒につくろう」とかいう計画を立てて、そこから1億円を作り出すような縛りを設定する方が、クリエイティブな経営だと思います。
なぜかというと、縛りがないと、現場は「as is」に向かっていくからです。新規顧客よりも既存顧客のほうが、短期的にはコストパフォーマンスが良いことが多いです。新しい見込み客を見つけて商談にこぎつけるコストを既存顧客に向ければ、その紹介で会える社内の別部門の担当者も含めて、何度でも会って話をすることができます。目先の成果が出やすいです。現場は成果を出すために会いやすい顧客に向かいます。そして小さな積み上げしか実現できません(じわじわと売上が減っていく可能性もあります)。
こうした現場の部分最適を乗り越えるために、トップダウンとしての「経営計画」が必要になります。トップが「経営計画にある、ベンチャーにアプローチする件だけど、いまどれくらい進んでる?」と聞けることが大切で、そのためには、その方向で行く!という経営判断をして、経営計画にそう書いていないといけません。
売上目標という数値化の重要性を改めて確認
経営計画を立てたならば、多くの場合は、売上目標も立てると思います。営業活動の観点からは、売上は最も重要な数値です。ですから、営業マネジメントにおいて、売上目標を見ていないということは、まずないだろうと思います。
ただ、ここでは、なぜ売上が重要か、ということを改めて確認しておきたいです。というのも、営業マネジメントをしていくにあたっては、売上より手前の指標をKPIとして見ていくことが多くなってきます。特に新規顧客の開拓や、新商品・新サービスの展開をしていくときには、売上にこぎつけるまでが遠くて、事業が前に進んでいるかどうかを売上目標の達成率だけでは見られないことがあります。
それでも売上が重要なのは、お客さんが十分なお金を払って商品やサービスを買ってくれていることが大切だからです。「いいね!」と言ってくれたり、サンプルやトライアルを試してくれたり、他の人に紹介してくれたり、というのも、もちろん大事ですが、実際にお金を払ってくれるのとは大きな違いがあります。売上目標は、実際にお金を払ってもらった量を直接計測しているので、お客さんの覚悟も表される指標である、という点から、やはり最も重要だと言えます。
さらに言えば、一時的な売上だけでなく、中長期の持続的な売上を見ていくことが大切だということも、忘れないでおきたいです。
目標と実績の管理
さて、ここまでは営業マネジメントの前提となる部分でした。ここからようやくマネジメントらしい部分に入っていきます。
売上目標を掲げて、それを実現していくためには、目標値と実績値を常に見比べてチェックしていく必要があります。
ただし、厳密に言えば、営業としては、売上目標ではなく、受注目標とその実績を管理することが多いと思います。それは、売っている商品・サービスによっては、契約が成立してから売上が立つまでのタイムラグが長いからです。営業活動が、受注によって一旦は完了していても、それが売上になるまでには、別の様々な要因が関係してきます(例えば受注生産における製造部門の遅延など)。
なので、ここからは、目標=受注目標として書いていきます。
この受注目標を管理するにあたっては、全社的な目標だけではなくて、営業活動の単位に細分化していくことが必要になります。例えば、営業チーム別や、個人別に細分化したり、業種や地域などお客さんの分類別や個社別に細分化したりして、それぞれの部分で、どれだけ受注できそうか、という見通しを立てることが重要ということです。
こうして目標の解像度を高めておくと、「あれ?ここが思っていたのと違うぞ!」ということが、あとで分かるようになりますが、ふわっとした全社目標だけだと、何がどうしてこうなったのか分からなくなります。
分けると分かる |
細分化した目標値と、実際に取れた受注実績とのギャップを定期的に確認していって、ギャップが大きな部分を見つけたら、営業マネジメントが機能しやすくなります。例えば、以下のような対策を検討するきっかけになります。
- 目標を達成できていない営業担当者へのサポートを厚くする
- そもそも割り当てた目標設定が間違っているようなら営業戦略から見直す
- 目標受注額に達しない大手見込み客への活動に注力していく
- 目標受注額を上回っている顧客群に想定外のニーズの可能性が見えてきたならば、追加の仕事をいただくことを目指す
逆に、あまりにも順調にコトが進んでいるのであれば、営業関係者みんなでハイタッチして喜びながらも、短期的なことに集中しすぎている可能性を考えるのも、営業マネジメントの一環です。そんなときは、もっと先のことを考えた種まき活動を進めておくなどの手を打つのも良いかもしれません。
ここで必要になる営業支援アプリの機能
- さまざまな切り口で細分化して
- 目標値が設定できて
- 実績値が集計できる
- 関係する誰もが任意のタイミングで確認できる
- 売上でなく受注を管理できる(両方できるなら、なおよい)
自分たちがどのような細分化をしたいのか、がポイントになります。顧客を独自のカテゴリーで分けて、カテゴリーごとの受注目標と実績を見ていきたいのであれば、当然、任意のカテゴリーで集計ができないといけません。アプリによっては集計・分析する機能が弱くて、任意のカテゴリーで受注額を集計できないということもあります。注意が必要です。
さて、ここまでずいぶんと長くなってしまったので、つづきは次の記事として書くことにします。
営業マネジメントを整える③
>前回は、営業マネジメントの基本の「き」というべき、「目標と実績の管理」について確認しました。今回は、そこからひとつ下に進んで、ちょっと専門用語っぽい「パイプライン管理」について、考えていきたいと思います。...