スキップしてメイン コンテンツに移動

営業マネジメントを整える⑤

 


(以前、noteに書いた記事をこちらに転載します)

営業マネジメントを掘り下げながら、それぞれのマネジメントレベルで営業支援アプリに必要な機能が何かを示していくことで、いろいろ考えるヒントにしたい、というシリーズ記事の第5回です。

前回の記事はこちらです。

前回の終わりに「次回は、データ分析的な営業活動の改善について、考えてみたいと思います。」と書きました。それが、このシリーズで毎度出している、この図の最後の部分にあたります。

ついにこの難しい図の最後の説明まで到達

組織としての営業能力の向上

これまでの営業マネジメントの話においても、データ分析的なところはあって、例えば「パイプライン管理」では、営業の流れを段階(プロセス)として定義して、それぞれの段階ごとに案件がどれだけ滞留しているかを数字で見ていました。「営業活動管理」においても、重点顧客へのアプローチ頻度を月何回などと数値で見ていくことがあるでしょうし、営業担当者のカレンダーの中で、重点顧客への訪問が何日あるかなども、見える化していくことがあるでしょう。数値化されていなくても、どの顧客にどのようなコミュニケーションや対応をしたのか、という記録もデータの一種です。

ただ、ここまでの話では、個別の活動を改善する機会や必要性を見つけるためにデータを使っていました。営業マネージャーが「この案件がストップしているな。担当者をサポートしたほうがいいな。」とか、「この営業担当者は、重点顧客に会いに行けてないな。何か問題があるのか聞いてみないと。」とか、というように営業担当者をサポートする機会を、営業支援アプリを活用することで、リアルタイムに発見していこうという感じです。

それに対して、この最後の部分では、「営業機会の発見 ノウハウの確立・共有」と書いていて、これは組織としての営業能力の向上にフォーカスした話になっています。

組織が学ぶチカラを持つ

営業マネージャーが、営業担当者をサポートするときには、ノウハウは営業マネージャーの中にあれば良くて、それを適切な機会を見つけて、個別の営業担当者に伝えていくことが多いと思います。昔の親方と弟子のような感じです。

しかし、組織として営業能力を向上していこうと考えるならば、優れた個人に依存するのではなく、学ぶチカラが組織の中に備わっている方が望ましいのではないでしょうか。(もちろん、優れた個人がいることも重要です。)組織が学ぶにあたっては、優れた教師がいて正解を教わる形と、教師がいなくても現実に起きたことから正しそうな方法を導き出す形の2通りがあります。ここで「学ぶチカラが組織の中に備わっている」と言っているのは、後者の方に近い話です。

営業活動を改善していくために、「いつ誰に何をどのようにすれば受注に結びつきやすいか」を、自分たちの経験の積み重ねから見出していきます。そのために、データを蓄積して、それを分析します。

データ分析から営業能力を向上するとは

具体的には、下記のようなことを実施することになります。

  • データを分類するために必要な項目を記録できるようにする(当たり前ですが)
  • 仮説に基づいた分析、相関分析などから傾向を発見する
    • 例)展示会で来訪者のランク付けをしたあと、AランクとBランクとではサンクスメールへのリアクション率は異なるか?
      ランク付けごとのリアクション率は判断した人によってバラツキがあるか(ランク付けの精度にバラツキがあるか)?
    • 例)メールを出すタイミングとして、月曜10時ごろと、金曜16時ごろと、その他の時間で、リアクション率は異なるか?
    • 例)初回訪問時に、どの資料を使って説明するかによって見込み客の反応、次の段階へ進む確率は変わるか?
    • 例)顧客側担当者が上司に説明するために資料Aを渡したときと、渡していないときで、顧客企業内の決裁が下りる確率は変わるか?
    • 例)案件を分類したときに、カテゴリーによって平均リードタイムは異なるか?
      ※リードタイム:案件が立ち上がってから受注までにかかる時間、もしくは特定の段階に滞留していた時間
  • リードタイムから逆算して、ある時点で必要な売上に達する受注を得るためには、どの時期にどれだけの案件がどの段階にあるべきかを算出する
  • 確からしい法則を見つけたら営業ノウハウとして営業活動に反映する
    • 例)パイプラインの各段階において案件を進めるのに有効とされる行動は、必須のタスクとして定義する
    • 例)受注につながりやすい説明を営業ツール(チラシなど)の内容として反映させる

手書きやWord文書による日報や週報でも、こうした活動に使えるデータは、あるにはあると思います。また、多くの営業支援アプリでは、案件や営業活動記録の一覧を、CSVなどに出力する機能があるので、それらから自由に集計することもできるでしょう。

ただ、情報を抽出したり集計したりって、結構、大変です。紙に書かれた情報は論外ですが、アプリが一覧を出力してくれるとしても、そこから人間が頑張って情報を抽出して活用するというのでは、せっかくITを活用している甲斐がないですよね。そう考えると、営業支援アプリに求める機能も、自然と見えてくると思います。

ここで必要になる営業支援アプリの機能

  • 任意の入力項目を追加できる
    • カテゴリーなどは簡単に入力できるように選択式にできる
  • 任意の軸でデータを集計/分類/表示できる
    • 複数の条件に合致した案件数を集計できる
    • 自社の顧客分類に従って任意の期間の営業活動記録を列挙できる
    • 例)重点顧客に対する先週の営業活動記録
    • 例)A地区の飲食店に対する先月の訪問数と受注金額/件数
  • 案件が時系列上でどのように推移したか記録して分析できる
    • 例)顧客群別・担当メンバー別案件リードタイム
  • ルールとして決められたタスクの実施状況を確認できる
    もしくは、タスクを実施しないと次の段階に進めない

こうした考え方は、製造業の工場における生産管理に近いものがあります。生産管理には受注管理も紐づいてくるので、営業部門と生産部門もつながってきます。なので、製造業の営業部では、比較的、馴染みやすいものかもしれません。また、製造業の流れをくむ営業支援アプリでは、こうした考え方が機能として組み込まれていることも多いのかなと思います。

さて、ここまで5回にわたるシリーズの中で、営業支援アプリに必要な機能をいくつも挙げましたが、実際にアプリを選ぶ際には、どんな感じになるのか、具体的なイメージがつかみづらいかもしれません。次回は、特定の営業支援アプリを検討したときに、足りなかった具体的な機能を例として挙げることで、少しイメージをつかんでもらえたらと思います。


このブログの人気の投稿

簡単にできるIoT~振動の計測②

  前回 は、何を作るかを考えて、設計メモにまとめました。 簡単にできるIoT~振動の測定① 先日(といっても随分経ってしまっていますが…)とある方から、M5StickCというデバイスをいただきました。それで、どんなことができるのかと試してみたことを紹介します。 M5StickC このデバイスは親指(より少し小さい?)くらいのサイズですが、中にESP32-... まだプログラミング自体には触れていませんでしたし、大まかな設計をしただけですが、ここまで意外と考えることが多かったと思われるかもしれません。ですが、どう作るかよりも、何を実現するかの方が重要です。本来はもっと何を実現するかを模索するのに時間をかけるべきだと思います(そのためにシステムを試作することも含めて)。 さて、今回はさっそくこれを作ってみます。作る方法はネットでいろいろな人が教えてくれるので、それらを参考にすれば、すぐに作れます。 データを受け取って蓄積する側を作る まずは、Googleスプレッドシートに以下の図のような表を作り、M5StickCから受け取ったデータを書き込めるようにします(図では既にデータが蓄積されています)。 A列「gasCodeVer」:一応、動かしているスクリプトのバージョンを記録 B列「receiveTime」:データを受け取った時刻(receivedでないのはご愛嬌) C列「dataNum」:いくつデータが取れているかを記録 D列「data1」以降:加速度データ そのために、以下のことをします。 Googleドライブでスプレッドシートを作る 「ツール」→「スクリプトエディタ」からスクリプトエディタを開く Apps Scriptでスクリプト(コード)を書く 「デプロイ」→「新しいデプロイ」→「種類の選択」→「ウェブアプリ」からデプロイ 基本的なやり方は下の参考ページ(前半部分)を見れば、すぐに分かります。実際に手元で出る画面と少し違うところがあるかもしれませんが、だいたい一緒かな、という緩さをもって見ていくと良いと思います。 [M5Stack] M5Stackで取得したデータを、Google スプレットシートへ書き込む M5StackはWi-Fi機能との連携が特徴の一つとなりますが、やってみたくなるのがクラウド連携だと思います。そこで、今回は、Go...

システム内製化のトレンド

  これまで多くの企業にとって、ICTと言えば外から買ってくるものでした。もしくは、業者に発注して作ってもらうものでした。それがクラウドサービスになって、借りてくるもの、みんなでシェアしながら使うもの、になりましたが、今は社内で作るものになり始めています。いわゆる「内製化」です。 かつてソフトウェアを開発する企業に所属していた身としては、市場の大きな変化につながる話なので、とても気になっているのですが、多くの企業の方にとっては、まだまだ関心の薄い話題かもしれません。なので、なぜシステム内製化というトレンドが起こりつつあるかについて、僕の認識していることを少し書いておこうと思います。 とはいえ「なぜ」というのは非常に簡単な話です。経営、ビジネスモデル、事業の強み、といったものがICTと密接に関係するようになったからです。 アウトソーシングしていい業務と、してはいけない業務は何か、という議論をするとき、ひとつ大きな論点として、強みに直結するものかどうか、ということが挙げられます。その企業独自の強みを他社に依存すると、強みを持続させることも発展させることも危うくなるというのは分かりやすいと思います。システム内製化も同じ論点から出てくる話です。自社の強みの源泉となっている業務フローを支えるシステムだったら、自分たちの手の内に入れておくべきです。 また、今の時代が、不確実性が高く、かつ、変化の激しい時代である(と言われている)ことも、内製化の追い風になっています。不確実で変化の激しい市場に対応するビジネスは、その運用を柔軟に変化させ続けなければいけません。それも高速に。そのためには、システムもビジネスに追従して高速に変化させ続ける必要があります。システム開発を外注していたら、事業変化のスピードにはどうしたって追いつけません。システムが足を引っ張るようになります。必要なスピードを出すためには、社内で、ビジネスを回している従業員のすぐそばで、一体となって、開発をしていかなければならないのです。 そんなわけで、これまで「IT企業」とは言われていなかった企業が、続々とエンジニアの中途採用を始めて、自分たちでシステム開発をやれるようになってきています。そしてすべての企業が「IT企業」になる(逆に言えば「IT企業」という枠組みが消える)時代が来ようとしています。 もちろん、全ての...

営業マネジメントを整える①

(以前、noteに書いた記事をこちらに転載します) 【注意】この一連の記事では、具体的にどのアプリがいいか、ということは書きません。営業マネジメントの考え方をベースに、どのような観点からアプリを検討するか、ということを書きます。 さて、どのようなアプリ、システムを導入するにしても、まずはそれで「何をしたいのか」という目的が大事です。 これまで導入していなかった営業支援アプリを、いま導入したいと考える事業者には、何かしら営業活動を変えていきたい、という想いがあると思います。 では、どう変えたいのか。事業者によって、いろいろな表現が出てくると思いますが、多くの場合、営業支援アプリは「営業マネジメントを整える」ために導入されます。 ここでいう、自社の「営業マネジメントが整っている」というのは、どういうことでしょうか。このシリーズ記事では、「営業マネジメントを整える」方法を説明しながら、営業支援アプリの役割を改めて確認することで、アプリを選ぶ際のヒントを示していきたいと思います。 営業マネジメントは、なんとかして「to be」に近づけること そもそも、なんで営業活動をやっているのか、と言ったら、商品やサービスを売りたいからですね。でも、なんで売りたいのか、と言ったら、お金が欲しいから、ということでもあるのですが、根本を考えていくと、会社や事業のありたい姿、あるべき姿を実現するためです。 何もしないでいる状態(as is)と、あるべき姿(to be)には差分(Gap)があるから、営業活動によって、その差分を埋めていくわけです。 経営の話をするときに、よく出てくる図 営業活動は、この「to be」に近づく活動、ということですね。 そして、マネジメントというのは「なんとかする」ということなので、営業マネジメントは、なんとかして「to be」に近づけること。 それが整うということは、営業活動によってホントに「to be」に近づいているか、確かめられて、もっと近づけるように工夫できる状態になっている、ということです。 トップダウンとボトムアップを統合する この「to be」は、会社や事業のありたい姿、あるべき姿である、ということをさきほど書きました。ということは、営業マネジメントの出発点には、会社や事業の未来をどうしていきたいかを明確にすることがあります。そして、その未来に向かって、...