ノーコードという言葉が広まってきています。プログラミングの知識や経験がなくてもシステム開発ができる!というような触れ込みで、実際に No Code でコードを書かずにWebアプリケーションを作ることができる仕組みです。現場の担当者が、業務を効率化するためのシステムを自ら作れるので、システム開発を外注するよりも、業務の実態に即したシステムが作れて、なおかつ改善サイクルが速く回ります。こうしたシステム内製化の捉え方については、こちらでも書きました。
システム内製化のトレンド
これまで多くの企業にとって、ICTと言えば外から買ってくるものでした。もしくは、業者に発注して作ってもらうものでした。それがクラウドサービスになって、借りてくるもの、みんなでシェアしながら使うもの、になりましたが、今は社内で作るものになり始めています...
ただ、ここで注意したいのは、システム開発において、ノーコードを使うことで補える能力、コードを書いてシステムを実装する能力というのは、ひとつの要素でしかないということです。業務をシステム化するときに関係してくる要素を、大雑把に列挙すると以下の5つになるかと思います。
- ビジネスセンス
- 業務を設計する能力
- システムを設計する能力
- 業務を実装する能力
- システムを実装する能力
いわゆるプログラマやシステムエンジニアといった職種の人たちも、必ずしもこれらの要素を兼ね備えているわけではありません。しかし、ビジネスに関するシステムを開発する際には、どれも重要です。以下、ひとつずつ、どういったものか説明します。
まずビジネスセンスという曖昧な言葉で何を言いたいのかというと、事業全体の成果につながる変化を生み出す力や方向性です。事業全体がどこに向かっていて、その際に業務はどうあるといいのか、ということが見えていると、その業務が事業全体の成果につながりやすくなります。
次に、そのために、その業務をどう設計するといいのか考えられるといいです。誰がどんな風に動いて、どんなモノを、どんな情報を、どのように動かしていくと、その業務というのは今より良くなるのか。というか、それが考えられないと、そもそも業務を変化させる意味がないですね。
そこからシステムの話になっていくわけですが、業務を設計するにあたって、システムがどこでどのように役立つといいのか。そして、システムがどうあると、他の業務との連携もよくなるのか。といったことを考えられるといいです。こういった見通しが立っていないのに、なんとなく必要そうだからとシステムを導入すれば、何か悪いことが起きそうだな、というのは誰でも想像できると思います。業務をどう変えたらいいのか考えずに、なんとなくパートさん1人増やしておいたら良いこと起きるかというと、それは怪しい、というのと同じです。
そして、机上の空論で終わってしまっては、現実が変わっていかないので、ここから実装する能力というのが必要になります。「実装する」というのはシステム開発でよく使う言葉ですが、新しい機能を追加したり組み込んだりして実現することです。業務を実装するという言葉で表したかったのは、新しい仕事の進め方を設計したあと、実際に現場で実現させるということです。必要な作業を実行するためには、作業をする人に研修する必要があるかもしれませんし、資材の置き場所が重要かもしれません。新しいビジネスや業務が上手く回るために必要なモノゴトを用意して、実際に「回す」能力が要ります。
その中に、システムを実装することも含まれてきます。役に立つシステムを実際に組み上げるためには、世の中に出回っている部品を組み合わせたり、プログラミングによって新たな部品を作ったりすることになりますが、正しく作らないと上手く動きません。そのためプログラミングの知識を持っている人が組み上げることになります。ここでノーコードというものが意味を持ちます。JavaScriptやPython、C言語やJava、C#などのプログラミング言語についてよく知らなくても、ノーコードであれば、コードを書かずにプログラミングができます。
ただ最初に書いたように、ノーコードになることで補えるのは、最後のところだけなのです。ですから、ノーコードだから簡単にシステムが作れるかというと、それはまた違います。
しかし、システム開発に特化したスペシャリストが、上述の5つの要素を兼ね備えていることも、また期待薄です。特に業務を設計する能力や、業務を実装する能力は怪しいでしょう。そうであれば、業務分野で秀でた人が、システムを実装する能力を得る方が、優れたシステムを作れそうに思います。